スーツケースの材質の違いや特徴について

みなさんはスーツケースを選ぶとき、材質について考えてことはありますか?
スーツケースにもさまざまな材質があるため、安易に価格だけで選んでしまうと後悔してしまうことも。軽さ、丈夫さ、見た目など、どれを重視するかによって変わってきますが、それぞれの材質にはメリットやデメリットがあります。 このコーナーでは、スーツケースの材質の解説とともに、それぞれの特徴をご紹介していきたいと思います。

スーツケースのカテゴリは「ハード」か「ソフト」かに大別される

スーツケースの材質にはさまざまな種類がありますが、まずは大きくハードタイプソフトタイプの2つにわかれます。

ハードタイプとはその名のとおり硬い素材でできているスーツケースのことを言い、強度や耐久性、防水性、防犯性が優れています。

ソフトタイプとは柔らかい素材でできているスーツケースのことで、安価、軽量、拡張性などが優れています。 日本人はハードケースが好まれやすい傾向ですが、海外ではソフトケースも人気があります。

ハードタイプのスーツケース

ハードタイプは、ケース表面やフレームなどが硬い素材でてきているスーツケースです。日本では旅行用として最も多く出回っているスーツケースの1つで、色やデザイン、大きさなどたくさんの種類が発売されています。

ABS樹脂

ABS樹脂と呼ばれる強化プラスチックで作られており、強度や剛性に優れている特徴を持っています。表面は硬くてへこむことはまずなく、中身の保護という面では最も安心できる素材といえます。しかし本体自体がやや重くなるというのが欠点です。
ひと昔前はハードタイプ主流となっていた素材ですが、近年ではよりポリカーボネートや混合樹脂の素材も増えてきました。

ポリカーボネート

ポリカーボネートはABSに変わる新素材であり、ABS樹脂よりも強度や柔軟性に優れている特徴を持っています。
またABS樹脂に比べるとかなり軽量化できるため、大型のスーツケースでも本体が軽くて扱いやすいのもメリットです。素材が非常に薄いため、表面はペコペコ簡単にへこみます(へこんでも戻ります)。ですから中身の保護力に対してはABS樹脂に劣ります。また価格が高いのが欠点です。

ABS+ポリカーボネート混合樹脂

ABSとポリカーボネートを混合した素材のもので、軽さと強度のバランスが良く、価格も比較的手ごろというメリットがあります。
現在では最も主流になりつつある素材ですので、初心者の海外旅行向きの素材ともいえるでしょう。

Curv(カーヴ素材)

スーツケースの老舗メーカーであるサムソナイトが特許を取得している新素材で、ポリカーボネートを大きく上回る軽さと復元力が魅力です。素材自体が繊維状になっているため、いわば服と同じような製法で作られており、車でスーツケースを踏みつぶしても元に戻るほどの復元力を持っています。またその軽さも驚異的で、70L程度の容量で重さが2kg強しかないのもメリットの1つです。人気はコスモライトシリーズです。

アルミニウム合金

素材がアルミニウムでできているタイプのスーツケースです。スーツケース型のようなものもあれば、お金を入れるような(いわゆるジュラルミンケース)箱型のようなものまでさまざまです。
強度や耐久性は抜群で、長寿命なため長く使えて安心です。しかしABS樹脂よりも重く、価格もかなり高額になるので、手軽な海外旅行としてはあまりおすすめできません。

素材の違いを外観だけでで判断するのは難しいですが、ABS樹脂はかなり表面が硬くて肉厚な印象で、本体を押さえてもペコペコへこむことはありません。100%純ポリカーボネートは、薄くて表面がペコペコ。ABS混合樹脂は割合によって厚さやペコペコ度合いが変わってきます。 買う前に商品の仕様書や感触をよく確認するといいでしょう。

ポリカーボネート100%の安物には注意

ポリカーボネート100%のスーツケースは一般的にかなり高額ですが、中にはかなり安いもの(中華メーカー製など)も出回っています。
もしポリカーボネート100%のスーツケースを選ぶのであれば、聞いたことがないメーカーのものであったり、中途半端に安いものは絶対に選ばないようにしましょう。

同じポリカーボネート100%でも、強度に大きく違いがあり、安い中華メーカーのものはすぐに壊れる(割れてしまう)ことが多く「安物買いの銭失い」になる可能性が極めて高くなります。

1万円程度で売っているポリカーボネート100%製などには注意しましょう。

ソフトタイプのスーツケース

ソフトタイプはケース表面が柔らかい素材でできているスーツケースです。ソフトケースは強度がないと思われがちですが、割れたりしないので、ある意味ハードケースよりも強いとも言われています。

ソフトタイプの素材は、一般的にナイロンやポリエステルを使用していますので、ハードケースのように素材によって極端に重さや強度が変わることはありません。

ソフトタイプメリットとしては、まず軽さがあげられます。同サイズであればABS樹脂よりも軽く、ポリカーボネートとほぼぼ同じくらいです。更に表面に複数のポケットやチャックがあるので、ちょっとしたものを入れておいたりできるのが便利ですね。ハードタイプだと二枚貝を開けるように大っぴらに床に置いて物を出し入れしなければなりません。空港の中でやるとちょっと恥ずかしいですが、ソフトタイプならポケットなどからのちょっとした物の出し入れはスマートにできますね。

また柔軟性があるので、多少荷物を詰め込める(ケースがパンパンに膨らむ)ことができるのもメリットの1つ。定格50Lでも、60Lくらいは無理やり入るかもしれません(笑)

逆にデメリットとしては、刃物などで破壊できるので、防犯の観点からハードケースに比べると劣ってしまうことがあげられます。また防水性が弱いので、雨や水の付着などには注意する必要もあります。更に外部からの衝撃がモロに伝わるので、ハードケース以上に中身の防御を慎重にする必要があります。

日本人には敬遠されがちなソフトケースですが、外国では逆にソフトケースの方が流通しています。

スーツケースのフレームはアルミニウムやマグネシウムが主流

ハードタイプのスーツケースのフレームは、以前はスチールが主流だったものの、現在ではアルミやマグネシウム製のものが主流です。アルミもマグネシウムも強度はさほど変わりませんが、マグネシウムの方が軽量性に優れているので、高級タイプに採用されています。

開閉装置はファスナーとフレームロックの2つがある

スーツケースの開閉は、チャックになっているファスナータイプか、フレームごとロックするタイプの2種類があります。ハードケースの多くはフレームロックで、ソフトケースはファスナータイプが多くなっています。

一般的にはフレームロックタイプの方が強度や変形には強いですが、一度変形してしまうとフタが閉まらなくなるというデメリットがあります。ファスナータイプは軽くて安価、フレーム変形の心配が少ないですが、開閉がワンタッチでできず少し面倒です。また雨が染み込んだりする危険性もあります。

結局どれがいいの?

このようにハードタイプとソフトタイプの説明を行ってきましたが、「どっちがいい?」と尋ねられてしまうと、判断が難しいのも現状です。

どちらにもメリットやデメリットがありますが、日本人の傾向としては飛行機の荷室に預けてしまう荷物はハードタイプのものが圧倒的に多く、小さめの機内に持ち込むようなサイズはソフトタイプのほうがよく使われています。

素材別の特性一覧
強度⇒衝撃や圧力に対する本体の強度
中身⇒中身の保護力(素材がへこまないほど中身のストレスが低い)
寿命⇒耐久性(価格によっても左右されるので参考程度に)
軽さ⇒持ち運びのしやすさや荷物の入る重さが増える
価格⇒値段の安さや買いやすさ

強度ではアルミ合金や100%ポリカーボネート製が若干高いですが、それほど素材によって大きな差はありません。

へこまない素材のABS樹脂やアルミ合金であれば、外圧から中身を保護するので、つぶれたら困るものを入れておくのに適しています。

ポリカーボネートやカーヴ素材、ソフトケースはへこんで衝撃を吸収するので、外圧はモロに中に伝わりますね。

長く使えるといえばアルミ合金ですが、樹脂製でも値段の高いものは高寿命なものが多いです。

軽さはソフトケースやポリカーボネートに軍配が上がります。特にカーヴ素材はとても軽いため、例えば25kgの重さ制限がある預け荷物でも、ABS樹脂ならスーツケースだけで5kgもあるので20kgの荷物しか入れられないのに対し、本体が3kgの重さしかないカーヴ素材のスーツケースでは、22kgの荷物を入れることができます。このメリットは大きいですね。

価格はアルミ合金やポリカーボネートが高いですが、これはピンからキリまであるので一概には言えません。

初心者の方が初めて買うスーツケースであれば、短期で機内へ持ち込むのであればソフトケースを、預け荷物にするのならばバランスがよいABS+ポリカーボネートの混合樹脂タイプを選ぶと良いでしょう。
予算に余裕があればポリカーボネート100%やカーヴ素材のものを買っておいてもいいと思います。

※これは一般的なもので評価しています。スーツケースは価格差によって強度や軽さの差が大きく出ます。購入するスーツケースによってはこの限りではないので、どうぞ目安程度にお考えください。

スーツケースの材質の違いや特徴についてまとめ

  • スーツケースは大きくソフトタイプとハードタイプに分かれる
  • ハードタイプは素材によって強度や保護力に違いがある
  • ハードタイプの主流はABS+ポリカーボネートの混合素材
  • ポリカーボネート100%の安物には気を付ける
  • 各素材にもそれぞれ長所た短所がある
  • 初心者の方ならABS+ポリカーボネートの混合素材がバランスがよい

海外旅行で初めてスーツケースを買われるのであれば、初心者にも扱いやすい手ごろなハードケースが安心かと思います。予算や長所短所を見ながら素材選びをしてみてください。