海外ではなぜチップを支払うのか

海外旅行をする上で、日本人がとても煩わしいと思うことに「チップの支払い」があります。

どうせならチップも含めて請求してくれると楽なのですが、アメリカなどを中心に相場や渡すタイミングなど、とても困りますよね。ここではチップの仕組みや、なぜチップが必要なのか?という疑問に、詳しく解説したいと思います。

チップとは

本来チップとは、感謝の気持ちをお金として渡すものです。日本においては完全な志(こころざし)として意識されることが多く、お店やホテルへ行ってもよほどの待遇をされない限り、チップを個別に渡す人は少ないのではないでしょうか。

欧米ではサービス料が独立していると思えばよい

日本の飲食店などでは、食事を提供する料金とは別にサービス料を請求しているお店もあります。特に高級レストランや居酒屋などで10%程度サービス料がかかるお店もありますし、材料原価にサービス料を含めて形で価格に反映していることもあります。

日本でもホテルや旅館、レストランなどで食事をする場合、基本的にサービス料が込みになっていて、それは宿泊や料理代に含まれていますので、私たちは提示された料金さえ払えば、後から追加して支払うことはありません。

ところが欧米ではこのサービス料というのが料理や宿泊代に含まれていないため、料理は料理、サービスはサービスでそれぞれ料金を支払うシステムになっています。料理には料金があらかじめ決められていますが、サービスには料金が決められていません。このサービス料金がいわゆるチップということになります。

料理代はコックや経営者に支払われ、サービス料はウエイターやウエイトレスに支払われます。ですから日本に比べて料理代は割安??になっているはずです。

欧米での従業員のチップは立派な収入源

例えば欧米ではウエイターやタクシードライバー、ホテルなどのサービス業に就いている人は、とても給料が安く設定されており、時給数百円程度で働いているケースもあります。これだけでは到底やっていけませんよね。

感覚的には「お店で働いてもいいけど、サービスはしっかりやって自分の給料は自分でしっかり稼いでね」ということなんですね。

そこでサービス料はいわゆる出来高制となっており、たくさんチップをもらうために個人個人がよりよいサービスをしようと必死になります。

もし同じ固定給料にしてしまうと、人によってサボったり、サービスに手を抜く従業員が出てくるため、昔からこのようなスタイルになったようです。(日本でも見かけますよね・・やたら不愛想でサービス精神がない店員とか・・)

ですから、アメリカなどのレストランでは、料理の代金はレストラン側へ、サービスの代金はウエイターなどの従業員へそれぞれ支払っているという認識です。

一般的なレストランの場合、飲食代の約15%をチップとして接客してくれたスタッフに支払いますが、仮に食事代が2,000円だった場合は、2,000円+300円をお店に支払います。接客したスタッフは300円がチップとして収入になるわけですが、1日の仕事で20人接客すれば、6,000円の収入になるという計算です。時給300円で8時間だと、2,400円しか店側からもらえませんが、チップ収入の6,000円を足せばそれなりの給料になるため、従業員も生活ができるわけです。

高級店になるとさらに質の高いサービスが提供されるため、チップの比率も高くなる傾向がありまます。

日本人の感覚では、給料ももらっているはずなのに、チップも請求するなんて「なんて図々しい連中だ!」と思ってしまうのは仕方ないことです。

しかし、欧米ではこのような給与体系があり、チップは正当な報酬として認められています。もちろんアメリカ人はチップ収入も確定申告が必要です。

チップでも相場がある

チップは本来感謝の気持ちですから、金額の決定はその人の気持ちに委ねられます。それじゃあ1円でもいいのか?という話になりますが、チップにも相場というものがあります。

相場以下の金額のチップを渡した場合、嫌な顔をされたり、酷い場合は文句を言ってくる従業員もいます。メニューを間違えられたり、よほどひどい対応された場合は別ですが、普通にサービスを受けたら相場程度のチップを渡さなければなりません。

この相場程度の・・・というのが日本人にとっては一番困る部分でもあり、慣れない海外旅行だと、どれくらい渡してよいのか分からず、食事などの度に頭を悩ましているのではないでしょうか。

チップを支払わなければならない人は

どんな人にチップを支払ったらよいのか、これも慣れない日本人にとってはチンプンカンプンです。レストランの接客係やホテルのスタッフはなんとなく分かると思いますが、意外な人にまでチップを支払わなければなりません。

レストラン・バーのスタッフ

レストランのウエイターやバーの店員はサービス業ですので、よほどひどい待遇をされない限りチップを支払わなければなりません。相場は一般的なお店の場合で食事代金の15%程度、高級店で20%くらいです。ビュッフェスタイルのレストランでもチップは必須、不要なのはファストフード店やフードコートのようなセルフサービスでの飲食店だけです。

ホテルのスタッフ

ホテルにはたくさんのスタッフが働いていますが、基本的に何かしてもらった時にはチップを払います。相場はしてもらった内容によっても変わってきます。

運転手

最もお世話になるのがタクシードライバーですね。運賃+15%程度をチップとして支払います。ツアーバスやリムジンバス、シャトルバスなど、特定の人だけを送迎してくれる場合もドライバーにチップを支払わなければなりません。

公共交通である路線バスや列車、地下鉄に関してはチップの支払いは不要です。

ツアーガイド

ツアーガイドや運転手にもチップを支払います。日本からの観光旅行で旅行会社が主催したツアーに参加する場合は、「チップ代込み」となっている場合もあるので、旅行会社に確認してみるとよいでしょう。現地で申し込んだオプショナルツアーでもケースバイケースです。

そのほかのサービス担当者

エステやマッサージ、ヘアサロンなどでも担当者へチップが必要です。これも旅行会社主催のツアーの場合は、チップ代が込みになっているケースがあります。

海外ではなぜチップを払うのかまとめ

  • 日本と外国ではチップの定義が少し違う
  • アメリカなどのサービス従業員の給料は安く、チップが収入源となる
  • チップは小遣い稼ぎではなく、正当な報酬
  • チップにも相場があるので、いくらでもよいというわけではない
  • チップの支払いが必要なケースはレストランだけではない

アメリカ諸国などでは、チップは小遣い稼ぎではなく、正当な報酬の一部となっています。チップは無駄で勿体ないとは思わず、サービスを受けた代金としての感覚で支払うようにしてください。